()内は可変
お問い合わせはこちらから

AD-LIVE 2017 出演者発表会の内容についての雑感

出演者発表会以降、ちょっと驚くほどアクセスが伸びまして(普段の3倍)、急遽この記事を書くことにしました。まだあんまり精査してないので、粗いところはご勘弁ください。

AD-LIVE 2017出演者発表会についてです!

2018/06/25追記 2018年版の記事ではありませんので、ご注意ください。

AD-LIVE(アドリブ) 2017 - AD-LIVE Project

出演者陣に関しては公式サイトをご覧いただくとして。

出演者陣

 全体の印象としては、「手堅くまとめた」というのが最初の印象でした。あと、鈴村健一さんとの縁が分かりやすいのも興味深いです。

 では、以下個別の感想とか。

 案の定、総合プロデューサーでもある鈴村健一さんが初日でした。やはり初日はデバッグ公演のようです。……今回は「全公演異なる脚本、異なる世界観」とのことなので、この構造でデバッグがどれだけ効果を上げるのかは少し気になります。

 初出演として、てらそままさきさん、鳥海浩輔さん、羽多野渉さんに関智一さん、豊永利行さん、蒼井翔太さんの6人。継続・復帰が鈴村健一さん、中村悠一さん、森久保祥太郎さん、高垣彩陽さんに津田健次郎さん、浅沼晋太郎さん、と。

 前年は初参加5名、継続・復帰組7名でしたので、初参加勢が増えております。とはいえ、てらそまさんと関さんは舞台で鳴らしたベテランであり、どこかではAD-LIVEに来るのではないか、と思っていた方も多数おられるでしょう。てらそまさんは『仮面ライダー電王』の10周年で、関さんは現在放送中のラジオ番組『ユニゾン!』で、それぞれ鈴村さんとの縁があり、タイミングとしてもオイシイところかと思います。

 てらそままさきさんと言えば、ジェントルなたたずまいと裏腹に、芝居においてはアドリブを縦横無尽に入れ込むエピソードがたびたび聞かれます。鈴村さん曰く、「てらそまさんと遊佐(浩二)さんが先録りで、俺と関(俊彦)さんが後録りだったんだけど、あの人たち好き放題にアドリブ入れまくって、俺と関さんが超大変だった!」という収録があった*1そうで、そのエピソードひとつでもいろいろ伝わりますね。
 初参加でありながら、鈴村さんと組んでの初日公演。『電王』での経験から、お互いの呼吸感もかなりの精度で把握しているはずで、総合プロデューサーでもあるAD-LIVEマスター・鈴村さん相手でもきっちりマウントを取ってくるでしょう。むしろ、完全に押し負ける鈴村さんを見たい、という気すらしてきます。



 鳥海浩輔さんは、個人的に完全に予想のど真ん中で、見込みが当たって一人でほくほくしています。ニコニコ生放送で月一回放送中の長寿生番組『鳥海浩輔・安元洋貴の禁断生ラジオ』において、安元さんが「鳥さんはとりあえず何でも受ける、なんでも拾う」とたびたび評しているように、鳥海さんの「どんな状況でもとりあえず泳いでみて、結果なんとかしてしまう」ような飄々とした態度は、即興劇の舞台では猛威をふるってくるでしょう。フリートークだと言われているのに、「なあ、相談があるんだ……」と、のっけからイイ声の小芝居で入っていくスタイルは明らかに強キャラの佇まいです。強い。
 コンビを組む中村さんも地に足着いた取り組みがたいそう魅力的な方で、地面にしっかり足を着けながらも、意味がわからない急旋回を乗りこなす展開が期待できます。絶対に空中分解が起きないコンビだと思いますが、空中分解が起きないからといって、まともな話になるとは限らないところも楽しみです。



 羽多野渉さんと豊永利行さんは、鈴村さんや森久保さんが参加している音楽フェス、『おれパラ』のファンであれば意識しているお二方ではないでしょうか。

 羽多野渉さんはいじられ力に定評があり、どんな場面でも全力で立ち向かっていく、タフネスなポテンシャルをお持ちです。どういうこと?とお思いの方は、前述の『禁生』における羽多野さん――おなもみクローバーZの活躍をぜひご覧ください。どうかしてる。私の中では、アニメ『空中ブランコ』における芝居が燦然と輝いています。この作品は実写取り込みがあり、当作品で羽多野さんは「乳首を摘ままれた顔をいただきたいんですけど」という無茶苦茶な要求をされております。見事に応えていらっしゃいますので、ご興味がわいた方はぜひどうぞ。
 その羽多野さんとマッチアップする関智一さんも、実にあらぶり放題のお方です。声音まで含めてきわめて多彩な芝居の力を持ち、常に第一線で活躍し続ける方であり、ラジオにおいては下ネタ方面の覇者であり、劇団ヘロヘロQカムパニー座長でもあるという、ミスター・オールマイティ。AD-LIVEに放り込んで何一つ不安がない方の代表格ですから、平然と乗り込んでくるでしょう。出演者発表会でも垣間見えたように、まずは羽多野さんが振り回される様相が目に浮かびますが、そこは羽多野さんの絶対に諦めない全力が輝くところ。アップダウンの激しい展開を生んでくれるのではないでしょうか。



 豊永利行さんは、私の個人的な印象としては「器用かつ多彩な方」という感じで、浅沼さんに近いグループかしら、と思っております。音楽活動においても、自ら作詞・作曲を手掛け、J-POP風のカジュアルなスタイルから、クールなロックまでも歌いあげる技量が凄まじい。「こういう俺」「ああいうオレ」をさくさく切り替えるスキルが極めて高いのだと思います。また、ステージを存分に謳歌するメンタルもとんでもないので、抱える「ヒミツ」によってはシリアスも大喜びでぶち込むはずです。
 受け止めるのがAD-LIVEの常連であり名手、森久保祥太郎さんということで、ドラマ性が高い展開が生まれやすそうだなあ、なんて思っています。森久保さんのていねいかつ親切なスタイルは、全公演が異なる、と明言された2017年公演においては鉄板中の鉄板のはずです。私の中ではいちばん安心して観ていられるコンビです。



 次なる高垣彩陽さんと津田健次郎さん。ビジュアルがおいしいですね。
 高垣さんは、ある一点においてAD-LIVE 2016全公演のMVPだと私は思っております。その一点とは「キャラクター力」です! AD-LIVE 2016はその構造上、どうしてもストーリーの影響力が大きく、ストーリーの要請でキャラクターが演繹されていった部分が大きく思えたわけですが、高垣さんの公演においてだけは完全にそのパワーが逆転しておりました。高垣さんが生み出した「シャワたん」のパワフルさたるや、AD-LIVE 2016キャラクターの中でも随一かと思います。それを支えているのは多くの舞台経験と歌唱力、そして何より身一つで突っ立つアイアンハートですから、今年の公演でどんなビッグウェーブが生まれようとも、ばっちりねじ伏せてくださることでしょう。
 パートナーである津田さんも、そのエッヂの効いたスタイルや声とは裏腹に、パーソナリティは意外とちゃらんぽらんというか、フリーダムな振る舞いに寄っていくところがおありです。一方、キャラクターのコアを明確につかみ、最小限の手数でキャラとストーリーを成立させる手腕もまた見事すぎるほど見事なのです。AD-LIVE 2015初日の昼公演で明らかになったその精密な技術は、即興性が高まりまくっている2017年公演では無二の武器かと思います。回数を重ねるほど明らかになる力でもあり、昼・夜公演、ぜひセットで鑑賞したいですね。



 最終日には、後出しの形で蒼井翔太さんが来ました! いつかはとは思っていたものの、2017年時点でおいでになるとは…… 嬉しい誤算というか、大喜びしました。
 高い声、端麗な容姿、圧倒的歌唱力と、備えているフィジカルがとにかく稀有な蒼井さんです。鈴村さん、高垣さんとの共演でもあったSUPER SOUND THEATRE『Valkyrie ~ Story from RHINE GOLD ~』アスク・エムブラ役ではすばらしい悪役ぶりでした。他にも舞台『PERSONA3 the Weird Masquerade』『ファンタシースターオンライン2-ON STAGE-』『PRINCE KAGUYA』などの数々の主演、歌手としてもすでに単独での武道館公演を経験しておられます。今回は最年少のメンバーとなりますが、舞台経験ではどのメンバーにも決して引けを取らないのでは。
 パートナーの浅沼晋太郎さんは本年度もAD-LIVE演出も担当なさるとのことで、つまり鈴村さんに次ぐAD-LIVE巧者なわけですから、蒼井さんともどもにおいしいとこどりをしてくれそうです。ただし、2016年公演のオーディオコメンタリー曰く、AD-LIVE演出部は浅沼さんを困らせるのが好きらしい……とのことで、波乱の予感もしています。このおふたりが舞台に立つまでにすでに10公演を消化しているという状況がどう作用するのか、とても楽しみです。

脚本および設定について

 第一印象:やりやがったな。

 もうちょっと書き下すと、「思いついちゃった」をひたすらに大切にしたんだろうな、ということです。出演者陣が手堅いということは、他のところでチャレンジしているということ。そのチャレンジはこちら側に集中しているのでしょう。

 全公演、異なる脚本・異なる演出・異なる世界観。つまり12本ぶん作ってます!というのは、ほんのちょっぴりの誇張があるようにも思えます。少なくとも、「ヒミツ」「ギミック」「アドリブカンパニー」「小道具群」についてはある程度共有可能だからです。完全に、と言わないのは、鈴村さん・浅沼さん向けの「ヒミツ」「ギミック」は彼らが参加するわけにいかない点を鑑みてのことです。
 ……とは言ったって、謳い文句として「全公演異なる」と言ってしまったからには、似ている部分があるだけでも誰かに何かを思われてしまうでしょうから、12公演異なる形にするために凄まじい労力がかかっているのは間違いありません。まったくのゼロベースなのか、今までの脚本会議で生まれ、ためこまれてきたアイディアのすべてをここぞとばかりに最大放出している形なのか……後々明らかになるかも、ならないかもですね。


 特に、倉庫については「目指せ、ドンキホーテ!」で今スタッフが頑張っている、とのコメントがありました。もしもせっかく作ったドンキホーテばりの小道具倉庫をフル活用したければ、話の展開が爆発的に発散してくれるに越したことはなく、全公演異なるぐらいでかえってちょうどいいはずです。「ドンキホーテばりの倉庫作ってみたい!」→「じゃあ公演内容はどんどん変わっちゃっていいじゃん!」という発想はあったと思います。

 鈴村プロデューサーからは、「リハーサルで、適当な設定でその場でやる通し稽古が超面白くて。あれをやりたかった」との発言が聞かれました。つまり……「事前準備をできる限りさせない」という方針なのでしょう。

 さらに、物語の軸となる「ヒミツ」と「お互いの関係」、「物語の結末*2」を事前設定というのは、実はものすごく制約が大きい形。「ギミック」「アドリブカンパニー」の存在を考えると、今回の展開は"即興的リアクション"が主軸となる可能性が高いのではと見積もっています。

 昨年に引き続き、「お互いの関係」を事前設定してきたところも注目ポイントですね。2015年公演までは、その構造上、舞台上の初対面は劇中での初対面と同義でした。それを片方が記憶喪失という設定でクリアしてしまったのが2016年公演のエポックだったのですが、今回はもっと根本的に「先に教えちゃう」という形に進化してしまいました。これによってAD-LIVEはますますエチュードに近づいておりまして、「エチュードを90分演る」という姿に原点回帰したともいえるかもしれません。

 あとは、大問題の「アドリブカンパニー」です。今回もっとも揺らいでいるところはここなんじゃないかな。何せ、出演者にとっては制約・不自由としての重さが半端ないのに、それが人数・登場回数すら不明、というのは……重いぞおぉー。
 AD-LIVE2016のスーパーアイドル・廣瀬詩映莉の参戦を期待する向きもありましょうし、私も期待してしまいます。が、ここでのポイントは、「超・超短時間出場」「大人数登場」「声だけ出演」の目が出てきたこと。90分エチュードというタイプではないけれど、猛烈な個性を放つ役者の方々や、舞台をたくさんの人が横切っていくような「通行人」タイプの登場の仕方もアリでしょうし、唐突に音声や映像だけで大ベテランが重い芝居を投げ込む形が現れてもおかしくありません。どんなことでも起こりえます。いやあ、怖い。楽しみですね。


 ことほどさように、出演者に求められる即興性は激しく高まっておりまして、これは反作用的に、属人性を排する方向に働いているのでは感じております。

 今までのAD-LIVEにおいては、おそらく多くの方が「大ファンの方の公演を昼夜ともに観る」という形でおられたと思うんです。そして、その方々はこうも思っていたんじゃないでしょうか――「他の公演も基本のストーリーは同じだから、我慢しよう……」とかね。今回はそのパティーンではいきませんよ。だって、基本のストーリー、違いますからね! 何が起こるか、わかりませんからね!

 AD-LIVE2017は、別の公演の姿を観たくなる佇まいになりそうです。というわけで、彼らの意図は「複数公演を、それも出演者が異なる複数公演を観てほしい」ということだと私は読み取りました。これが正しければ、出演者の方々以外の、ヒミツ・ギミック・アドリブカンパニーもその他も、ひたすら贅沢に、リッチに仕立て上げてくるのがモアベターです。緻密なプランではなく柔軟な枠組みをもって、AD-LIVEスタッフたちは奔放な出演者たちを受け止めることになるでしょう。AD-LIVEスタッフがどれだけの柔軟さを見せてくれるのか? これも本年の大きな見どころとなるに違いありません。


……以上でした。長く書き過ぎてすいませんでした。

うーん。わくわくする。まずは07月21日(金)公開だという、「ヒミツ」を知った時のリアクション動画の公開を楽しみにします。ところで、07/21って、2017のアナグラムなんですよね。覚えやすい!

*1:「超英雄祭 KAMEN RIDER × SUPER SENTAI LIVE & SHOW2016」の『仮面ライダー電王』パート用音声録り。

*2:この「結末」という表現は本当にそうなの?と思っています。「物語の最後に起きること」のほうが近い表現なんじゃないかしら。