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公開情報にはできないけれど誰かと共有はしたい「ミス」の話と、本当は公開したいミスの話

世に発表された作品の中には「ミス」が含まれています。

このブログでは、たしかたびたび「ミス」に関して書いてきた気がするんですが…… いま思い返してみて、具体的にどのエントリだったっけ?*1となっているので、あらためてもう一度、何度でも書きます。

私はわりと「ミス」という事柄そのものが好きです。この「ミス」というのは総称としての用法で、誤り・エラー・誤植・誤記・事実誤認などのほか、もっともっと些末で微細なもの、または、一見した時点では誤りに見えても実際には順当な形で成立しているものも含みます。端的にいえば、もっと普通の・一般的な別の形がありそうなものを指して「ミス」と呼んでいるんですよね。その点でいえば、「ミス」とはある種の特異な特徴を有する個所と言えましょう。

そういう「ミス」に触れたり、あるいは自発的に気づいたりすることに私は一定以上の興味を覚えるし、それをわりと逐一記憶しています。

上で「総称」と言ったように、ミスにはいろいろ分類があって、ただ単純によろしくないミスばかりではなく、何かを示唆してくれるミス、すてきだとさえ感じられるミスもあります。このあたりの正確な分類をいつかまたエントリにしたいんですが、今日の本題はそれではなくて。*2

いくらミスに分類があり、なんでもかんでも非難につながるとはいえないにしたって、「これってミスだよね」とネット上で紹介してしまうかといえば、これはたいへん慎重にならざるを得ません。いかに私個人が素敵に思おうが、示唆を示してようが、なんらかの綻びであることも一面たしかではあるからです。

以降の例はすべて実例ですが、具体的な作品名を挙げることが一切できません。分かった方も書かないようにお願いしますね。

  • 表示される月の名称(Januaryなど)にスペルミスがあった
  • エンディング内の文に誤字があった
  • スタッフロールで役者の名前が間違っていた
  • 「勝ったほうが負けたほうの言うことをひとつ聞く!」とキャラクターが発言し、その後、負けたほうが勝ったほうの言うことを聞いた
  • 「居丈高」を読み間違えた音声が収録されていた

特に最後ふたつはたいへん示唆的で、このふたつが私は大好きなんですよ。例えばシナリオライター、声優、ディレクターは論理ミスに対して脇が甘くなるのかもしれないな、と想像できたり、例えば声優さんでもあらゆる言葉に詳しいとは限らず、同時にこの作品の制作現場ではこの読み間違いを指摘して修正できる人は誰もいなかったんだな、とわかったり。「勝ったほうが~」の例なんて、画像データでばっちしログを残してあるんですがね。読み上げた声優さんひとりの責任ではないということはとても重要。


前半3つにしても、簡易なスペルミス、単純な誤字の頻度がわかれば、校正コストを支払っていないだろうことぐらいは推測できます。「エンディング内の文に誤字があった」例は移植版でしたので、移植にあたってのケアも行われなかったらしいことまで見えました。

これとは逆に、元のバージョンで存在していた誤字が移植版で消えた例も発見したことがあります。この「移植にあたって誤字が消えた例」はかなりクレイジーで、私に無限に時間があったら網羅してエントリに起こしたいぐらいすさまじいです。なぜこれができたのか、どんな制作体制だったのか、本当に謎。

同様に、上記の「スタッフロールで役者の名前が間違っていた」とある作品は、別の製品化の機会にそれを修正しています。公式サイドに「ミスがあるようなんだけど」と伝え、修正の有無を問い合わせたところ、「ミスには気づいており、今後の製品では直ります」と回答が得られました。以降はすべて直しているでしょう。


ことほどさように、ミスはあくまでミスなので、発生しないに越したことはないのですが、発生しているならしているで、なぜ発生したのかを想像することで、いろんなことが見えてくる点に大きな魅力があります。

でもなー。やっぱり実際の作品名まで挙げての公開はできないですよね。なんて惜しいのだろう!

とあるミクロのミスで作品そのものの価値なんて大きく変わったりしない――というのは言い過ぎにしても(エンディングでの誤字はさすがにがっくり来ましたから)、修正しようがないミスの指摘なんて、薬にもなりません。ウェブサイトなら手を動かせばいつなりと、パッケージ版のゲームでさえ、誤表記程度ならパッチ配信で修正されるご時世*3ですが、音声のミスとなると修正コストが高すぎます。めっちゃめちゃ重要な場面の音声とかなら検討の余地があるにしても、さらさらと通り過ぎていく部分を逐一直してはいられません。そもそもまず、パッチ配信で修正可能な文字にしたって、すべてを完全完璧にしようと思ったら莫大なコストです。できないと思ったほうが順当でしょう。

手抜かりをあげつらうだけになってしまうから具体的な作品名は一切出せないけれど、それでも「ミス」の話は面白いことが多いなあと思うのでした。今後も、非難するためではなく何かをうかがい知るために、「ミス」を手掛かりにしていきたいと思っています。


……ただ、モヤッとする「ミス」ってのももちろんあります。(ここから今回のオチです)

とある有料買い切りのアプリゲームで、どうやら挙動がバグらしい部分がありまして…… 再現性は100%、その個所にかかわる追加課金すら存在するという、アプリの売りの部分でもある一機能でのことです。公式サイドに報告し、回答として「バグを確認しました。アプリアップデートでしか直りませんので、アップデートをお待ち下さい」と連絡をいただいたのですが、それから4カ月以上、アップデートの気配はなし、という状況に陥っています。

わかってます。修正コストが支払えないんでしょうね。直しても売り上げが上がるとは考えられませんもんね。ただでさえ忙しい手数はさけませんよ。わかっているんですけど、アプリゲームのタイトルをすら一切どこにも書けない状態が、たいへんに、もどかしい!

Twitterでも、配信ストアでも、私は未だにこのバグの存在について公に共有していません。このタイプのミスは面白みもなければ示唆もなく、公表しても公式サイドの評価が下がるだけなので、仁義みたいなつもりで黙っているんですけど…… いやあ、どこかのタイミングでは言いたいなあ。だってそのアプリ、バグがある状態のまま有料で販売しているってことなんですから。問い合わせから1年経過したら言っちゃおうかな?とこっそり胸に抱いております。

知らずに買う人がいたら、それはそれで申し訳ないですからね。公式と敵対したいわけじゃないですけど、自分以外のユーザーにだって親切にしたいじゃありませんか。ねえ?

*1:下書きでお蔵入りしたやつかもしれない。

*2:補足用に注釈にそれでもなんとなく補足するために一パラグラフ割いておきます。例えば超芸術トマソンの例や、超芸術トマソンをモチーフにしたことにある種のミスがあった『「鈴村健一の超人タイツ ジャイアント」続・思い出のヒーローソング集』内作品、「トマソンバスターよみがえる」の例はたいへんに魅力的です。超芸術トマソンを「ミス」のうちに含んでいる点は私の偏りですが、「トマソンバスターよみがえる」に関しては、鈴村健一さん本人がブックレットで自らコメントしています。なんのこと?と気になった人はCDを買おう。すごく良いぞ。

*3:『Starry☆Sky』Vita版の修正の例(https://twitter.com/StarrySky_hb/status/996223423981408256)。修正前・修正後の画像データをログとして残しました。趣味です。