()内は可変
お問い合わせはこちらから

AD-LIVEを(私が)語る上での基本用語集

このエントリは、私がAD-LIVEについて文章を記すにあたってよく使用する語彙や概念について、あらためてまとめておくためのものです。最初に書き始めた時点ではAD-LIVE2017公演がまだ行われる前でしたので、若干記述が古い個所が残っていますが、随時、必要に応じて追加・アップデートをしていく予定です。

「この語はどうなの?」「これを書いておかないの?」という指摘を心から歓迎しております。何かありましたらお伝えください。

Ver 1.0 公開 2018/01/10
Ver 1.1 公開 2018/01/11 [AD-LIVE]を更新、[アドリブ]を新規に独立。
Ver 1.2 公開 2018/02/06 [モバ-LIVE][マクガフィン][信頼できない語り手]を追加。
Ver 1.2.1 公開 2018/02/06 [モバ-LIVE]の位置を修正、リンクを追加。
Ver 1.3 公開 2018/02/22 [板][喋-LIVE]を追加。[AD-LIVE]を微調整、[アドリブバッグ][影(陰)]の誤りを訂正。
Ver 1.4 公開 2018/08/31 [ギミック][シンデレラ曲線][デウス・エクス・マキナ]を追加。[喋-LIVE]に追記



では以下、続きを読む からどうぞ。

公式系基本用語

AD-LIVE

上演のほぼすべてを即興の台詞でつないで物語を紡ぐ、という形式の舞台演劇。「出演者の役柄は舞台上で対面するまで互いに秘密」「出演者はワードが書かれた紙をランダムに詰め込んだバッグを持って舞台に上がる」「上演時間は90分」が基本ルールとなる。細かなルールは当プロジェクトの総合プロデューサーの鈴村健一氏の考案(なのだろう、おそらく)。今後、アレンジルールのAD-LIVEは上演されるのだろうか? なお、読みは「アドリブ」であり、「アドライブ」「アドリブライブ」は誤り。プロデューサーが「読みは『あどりぶ』です!」と周知を図る場面を見たことがある方も多いのでは。

アドリブバッグ

舞台に上がる出演者が持っているバッグ。中にはアドリブワードと呼ばれるワードが書かれた紙が折りたたまれた状態で詰め込まれる。2014年は1種のみだったが、2015、2016年は3色展開、2017年は4色展開。ベルトは交換可能。鈴村健一氏いわく、「ベルトの長さ調整はとっても大事」らしい。

アドリブワード

出演者がAD-LIVE公演中に使用できるワード群。事前に観客から質問への回答という形で募集されるのが最近の定例。舞台上の出演者は任意のタイミングでアドリブバッグからアドリブワードを引き、使用することができる。また、引いたワードは必ず使用しなければならない。ただし、使用のタイミングは即時ではなく、少々のキープは許容されている。なお、質問への回答という形で募集される場合、アドリブワードには多少の方向付けというか、くせが生まれる。つまり、少しなら狙って引いてみることは可能。

アドリブクエスチョン

時たま公式サイトで募集される、観客から出演者向けの質問。そのほとんどは映像パッケージ化の際の封入ブックレット用だが、まれにそれ以外のタイミングで募集されることもある。募集期間がタイトなことが多く、公式Twitterアカウントなどに注目していないと、意外と見逃す。

演出部

AD-LIVEプロジェクトにおける演出を担当している部署であり、プロデューサーである鈴村健一氏、浅沼晋太郎氏、演出の川尻恵太氏を含む。舞台上の大道具・小道具に加え、2016年公演ではキャストのプランを踏まえての個別の調整も行っており、AD-LIVEにおける重要度は極めて高い。なお、上述の2016年において、キャストのプランをすべて聞き取りながらも、演出部からキャストへのフィードバックはしなかったらしく、キャストの用意した設定に対して親切な小道具が用意されたり、逆に悪魔的に意地悪な仕掛けを持ち込んだりもした。

Aキャスト、Bキャスト

プロジェクト内で用いられる、AD-LIVE脚本における出演者の役名表記、および呼称。通常の演劇と異なり、AD-LIVE脚本においては出演キャラクターの名前すらも変化する可能性があるため、台本にある既定のアクションであっても、その役名に固有名詞を記載することができない場合がある。この場合、脚本その他では「A」「B」の呼称が用いられる。
なお、2016年の脚本においては、先に登場するほうがBキャスト、後に登場するほうがAキャストであることがアフタートークで明らかにされていたが、映像パッケージ発売時に表記が差し替えられ、先に登場したのがAということになっている様子。……わかりにくかったんでしょうかね。

キュー

アナウンスや効果音に際し、その合図、きっかけとなるもののこと。演劇やラジオなどではそのままずばり「きっかけ」とも言い、「きっかけください」などの発言がまれに聞かれる。AD-LIVEは即興劇であるため、キューは常に流動的に出現する。主なものに、上演経過時間によるタイムキュー、キャストの発言によるセリフキュー(詳しくは筆者独自用語へ)がある。

彩-LIVE(いろどりぶ)

2017年公演で初めて登場したカンパニーで、メインキャストを助け、公演に彩りを増す出演者陣を指して呼ぶ名前。脚本に既定の進行を把握した上で舞台に上がっており、一定の台本に沿いつつも、メインキャストの即興はばっちり受け止めるという、台本&即興のハイブリッドパフォーマー。レシーバー(筆者独自用語。詳しくは後述)でありながら、役者への暗黙の状況説明役でもあり、とにかく多彩なミッションを抱え続ける存在でありました。本当にお疲れさまでした。

喋-LIVE

AD-LIVEプロジェクトにおいて、アニメイトとの協力で行われる、アドリブワードを使ったトークセッション及び公演の振り返り等を含むイベントの名称として用いられている。登壇者は総合プロデューサーほか、メインキャストの方。パッケージ版の発売後に開催され、これをもって実質的に1年間の〆になっている感じ。一般発売等はなく、参加するには抽選で当選するしかない。アニメイトでの購入に付く特典で応募ができるので、こういうイベントがお好きな方は積極的にアニメイトさんで購入しましょう。なお、わざわざ定義のところにまで「アニメイトとの協力で」と書いたのは、ほかの同種イベントでは別名だったからです。ある意味、とてもちゃんとしている。
(2018/08/31追記)……と、思っていたら、2017年版の映像パッケージにおいては、ANIPLEX+さんでの販売でも参加申し込みが可能になりました。こういう親切さは嬉しいものです。ありがとうございます。

モバ-LIVE

AD-LIVEプロジェクト公式がリリースしたWEBコンテンツ(リンク)で、タップひとつでアドリブワードを引くことができるもの。収録されているアドリブワードは2015年、2016年、2017年に募集されたワード。また、今までの公演でキャストが実際に使用したワードも収録されており、こちらを引いた場合には特殊演出とともに、公演年・引いたキャストの名前も合わせて表示される。個人的にはこの特殊演出をオフにした状態で利用できるモードがあるともっと嬉しいです。
補足として、2015年、2016年、2017年の募集時の質問の一覧を掲載します。アドリブワードから「このワードが生まれた質問は何?」と考えるのもまた楽しい。

  • AD-LIVE2015(15文字以内)

Q1. 友達に言われた、心に残っている言葉は?
Q2. 一度は言ってみたい決めゼリフ
Q3. 無人島に持って行って後悔しそうなアイテム
Q4. ある日覚醒した、全く使い道のない特殊能力
Q5. 風邪かなと思い行った病院で医者に言われた、面白い診断結果
Q6. 「それ悪口じゃん(笑)」ってアダ名
Q7. 原始人が現代にタイムスリップ。最初の一言は?
Q8. 視聴率60%越えの恋愛ドラマの最終話、予想外のサブタイトルとは?
Q9. 優等生が初めてした遅刻、意外な理由とは?
Q10. フリースタイルで一言!

  • AD-LIVE2016(15文字以内)

01.売上に悩む八百屋さんがコラボした意外なものとは?
02.レギホイ王国民が愛して止まない擬音の第1位は?
03.そんなコンテストあるの! ミス○○コンテスト!いったいなに?
04.1万人に言って、たった1人がほんの少しだけ傷つく悪口を考えてください
05.新番組!形容戦士○○ロボ ※○○には形容詞が入ります。(例 形容戦士 スッゴイロボ)
06.視聴率70%越えサスペンスドラマの最終話。予想外のサブタイトルとは?
07.バカ院選挙アホ区代表に立候補。あなたが掲げるマニフェストとは?
08.フリースタイルで一言

  • AD-LIVE2017(10文字以内)

Q1. 自分の性格を一言で表すなら?
Q2. サバンナで新種の動物を発見!その特徴は?
Q3. あなたは人気DJ!フェスで観客を盛り上げる煽り文句は?
Q4. 視聴率80%越えコメディドラマの最終話。予想外のサブタイトルとは?
Q5. 突然魔法が使えるようになった!どんな魔法?
Q6. 今あなたが一番欲しいものは?
Q7. 幸せの青い鳥はどんな鳴き声?
Q8. 全米が泣いたSF超大作!その映画のキャッチコピーを考えてください。
Q9. 実家から届いた仕送りに入っていた意外なものとは?
Q10. フリースタイルで一言

作中基本用語

ポジティブギブアップ

初演時、およびAD-LIVE2014で利用された設定。以下白黒反転(隕石落下による地球滅亡を知った人類が、ポジティブに滅亡を受け入れようとした運動のこと。人類はポジティブギブアップを見事達成しており、公演中、今日がまさに隕石が落下する「人類最後の日」であることが明かされる。

トモダチファクトリー

AD-LIVE2015で利用された設定。「友だちを作る」サービスを展開している大企業。グループ、一対一などの組み合わせはもちろんのこと、年単位にわたる長期コース、数ヶ月のコース、数週間、中には60分などの超短時間コースなどの用意もある。各コースのナビゲーターは社員が務めることが多い模様。

マインドダイブ

AD-LIVE2016で利用された設定。人の精神に直接入ることができる技術であり、精神の治療に極めて有効とされた。しかし、その黎明期にマインドダイブを悪用した記憶の改ざん事件が起こり、国内外で議論が紛糾。国際的に有効な「記憶法」が制定されるに至った。今では厳密な監視体制のもとに運用される形となり、利用用途もその多くが医療行為に準ずるものとなりがちである。現在は開発元であるベルソン社がほぼ独占的にマインドダイブのサービスを展開しており、一部の施設では「マインドダイブ見学ツアー」も実施されている。
……なお、まったくの余談ではあるが、精神へのダイブネタはわりと見かける。筒井康隆『パプリカ』のDCミニなどは類例と言えましょうね。

独自用語

※以下、すべて筆者が勝手に書いていることです

レシーバー

「受ける人、拾う人」の意。各公演において、各場面、上演内容全体の調整を担当する役割のこと。場面単位で推定される場合もあるが、各公演全体でおよそこの人、と推定される場合もある。もちろん、実際にAD-LIVE内でこのような役割が直接指定されていることは考えにくい。一方で、キャストの中には「今ここでは俺が拾わないと」などの思考は発生しているはずと考えられ、このような状況を「レシーバーを務める」と言いたい。
特に「レシーバー」としての技術力が高い(と目される)キャストとしては、筆頭に櫻井孝宏氏、次いで岩田光央氏、鈴村健一氏が挙げられる。AD-LIVEの構造上、舞台上の全キャストがもれなく"非"レシーバーであることは考えにくく、彩-LIVEのようなサブメンバーを含め、「拾える」メンバーが一人は存在する……という状況は保たれると予想しております。

PG脚本、TF脚本、MD脚本

それぞれ、「ポジティブギブアップ」「トモダチファクトリー」「マインドダイブ」のアクロニムであり、AD-LIVE2014、2015、2016それぞれの脚本のこと。西暦年表記よりも内容ベースで表記したほうが(私が)わかりやすいので、この形で記載する。

タイムキュー

時間経過によるキュー。例としては、PG脚本、TF脚本における電話など。各場面の区切りに相当するものではあるが、厳密に時計通りに鳴らすわけではないらしく、舞台上のキャストの掛け合いの区切りを見計らっているようす。また、MD脚本においては、舞台上のキャストに場面転換間近であることを知らせる前振りのアナウンスという形でも運用された。

セリフキュー

舞台上のキャストのセリフ自体がキューとなるもので、MD脚本で多用されている。出演者の特定のセリフに反応するシステム音声や、手紙末尾の名乗りをトリガーとした暗転などがその例にあたる。特に前者は、タイムキューと大きく異なり、特定の言葉や発言への反応として何度でも発動できる点が特徴的である。このタイプのセリフキューを運用するには「出演者のセリフをキューと判定し、音響効果を即時操作できる/音声を差し挟める」というハイスキルなスタッフの存在が必要不可欠。

インビジブルな

「不可視の」の意。AD-LIVEにおいては、物理的に舞台上に存在していながら存在が無視されるものが複数あり、この属性を「インビジブルな」と言いたい。例として、アドリブバッグ、アドリブワード、出演者がつけるインカム。これらはキャストが物理的に所有し、接触し、利用するが、劇中でその存在が観測されることは基本的にない。もしもその存在が舞台上で観測された場合は破格となり、メタ的な表現に突入すると言える。

引き合い

出演者がアドリブワードを延々と引き続ける状況のことを指す。引かれたアドリブワードがその"くさり"*1にうまくかみ合わなかった場合、シークエンスの進行が停滞してしまうために、ある程度適したアドリブワードが出るまでワード引きをリトライすることになっている状態。多くの場合、3,4枚でまとまってくれるが、もうちょっとおかわりする状態になることも。

ギミック

英語で「仕掛け・機構・からくり」の意。ここでは私個人の使い方として、「動く」というところに力点を置きたい。つまり、舞台上に設置された/される大道具・小道具のうち、なんらかの可動部があって、その可動によって演出的機能を持っているもののことを特にギミックと呼びたい、ということ。
2016年公演におけるマインドバス、2017年公演ではクローゼットが。そしてもちろん、2014年、2015年は舞台全体そのものがギミックでもありますね。それ以外にも、壁に埋め込まれた金庫や、照明が仕込まれたあれやこれも、ギミックの一つです。なんども再利用されるものもあれば、一回ごとに実質使い捨てられていくものもあり、サプライズをもたらしてくれたりも。

演劇用語

上手、下手

舞台上の方向を表す語で、観客席側から舞台に向かって右手側が上手(かみて)、左手側が下手(しもて)。舞台上のキャストにとっては入退場の方向をも表す、極めて重要な概念である。AD-LIVEにおいては回転式円形舞台が用いられる場合があり、この場合は入退場の導線(ドア)が舞台奥側の壁の両サイドに設置された。AD-LIVE2017においても上手・下手の袖は意図的に使用せず、舞台に建て込まれた壁に設置されたドアが入退場の導線となっている。
一部の暗転においてはキャストの入退場箇所が指定されており、リハーサルではこのあたりの入退場の確認もするんだろうなあ、とか思う。もちろん、上手と下手は舞台裏で繋がっているので、方向を間違えてもリカバリの余裕はある。でも慌てて走ると足音が漏れたりするんですよね、これがまた。

舞台袖

単に「袖」とも。舞台の両サイドの、垂れ幕によって観客席からは見えない状態にある空間のこと。多くの演劇において役者が出入りする場所であり、登場直前の待機はだいたい舞台袖である。舞台袖からちょっと顔を出すと端の方の観客席から見えてしまったり、ちょっと声を出すと音が漏れたりと、袖にいる時の振る舞いには注意する必要がある。めずらしいことに、AD-LIVEにおいては入り・はけでは舞台袖があまり使用されない。役者の皆さんの待機場所として活用されているのだろう。もしかしたら小道具置き場が作り込まれているのかも。

大道具、小道具

演劇に用いられる舞台装置のうち、舞台上に設置され、観客から直接目視されることで意味を成すものを「道具」と呼び、特に位置を動かさないものを大道具、手に持ったり、移動させたりするものを小道具と呼ぶ。AD-LIVEにおいては、演出部が用意するもの、キャスト本人が用意してくるもののに分かれており、演出部が用意するものについては、大道具、小道具すらもそのほとんどがキャストに対して全容が伏せられている。……つくづくとんでもないな。
通常、大道具の設置は暗い中で素早く行う、というミッションが多く、軽く、持ち運びしやすく作るのが常。発泡スチロール大活躍! ……なのだが、AD-LIVE2016においては、大道具の運搬・設置自体を一部演出に取り込み、観客にも見せてしまうという技を見せた。マインドバスは本当にテクニカルなギミックだと思ってます。

暗転

舞台演劇において、照明をすべて消して暗闇にした状態で場面転換すること。なお、暗転中にキャストやスタッフが立ち位置・設置位置等で迷わないように、舞台の床に蓄光テープなどで目印をつける(通称・バミる。詳しくは後述)こともよく行われる。逆に、照明を落とさず、明るいまま場面を転換することを「明転」と言う。暗転中はどうしても見た目上の動きが絶えるため、次の場面を想起させる音楽やSEなどで間を持たせたりなどの工夫を挟む場合がある。が、AD-LIVEでは即興というその構造上そのような演出が準備しにくいため、暗転の時間をいかに短くするかを考えていそう。2016年の演出において明転+暗転の形式にしていたのも、暗転を短くしておきたかったのかな、と思っていたり。

影(陰)

舞台上とは逆に、舞台外、袖など、観客から見えない場所のこと。特に舞台には出ずに音声等のアクションで演劇に介入する場合に「影(陰)で」「影(陰)から」という表現を用いる。影ナレ、影ゼリフなどの類語もあり。影(陰)からのセリフであれば台本を見ながら読めるので、暗記しなくていい、というちょっとした効果もある。声優の本来の技術、「紙に書かれた文を読む」にも近づきますし。なお、「影」の表記は基本的に誤り。出版物の文脈では、"Shadow=物の形、光、光を遮ることでできる黒い部分"の意は「影」、"Shade=隠れて見えない所、光の当たらない所"の意は「陰」と使い分けますが、演劇の場合は「影」の表記が多めのようです。すいません、初校では誤ってました。

各種舞台において、ステージ部分そのものを指す語。比喩的な意味でも、観客から視認される物理的範囲を言いたい場合にも用いられる。派生語として「板付」「影板」があり、「板付」は、幕が開いた時や、場面が変化した時にすでに舞台上にいること、「影板」は板付とは逆に、場面開始時に舞台袖等で待機していることを指す。「板に付く」という慣用句でもおなじみですね。

バミ・バミる

舞台もしくは大道具・小道具などに、テープで付けた目印のことをバミと呼び、その目印を付けることをバミるという。舞台演劇では、暗転中の暗闇でも見える目印としての役割が大きいため、暗所で薄く光る蓄光テープが用いられることが多い。床だけでなく、机の角などぶつかりやすい位置にも張っておくのが親切。なお、演劇に限らず、音楽ライブでの立ち位置を示すビニールテープや、イベント会場等で一時的に立ち入り禁止や混雑対応導線のスペースを明示するために貼られるガムテープなどもバミと呼ばれる。特に色付きガムテープを使う場合は「赤バミ」「黒バミ」と言ったりも。当然のことながら、勝手に剥がしてはならないし、剥がれていたら補修する。語源は「場見(ばみ)」だとか。そういえば「黄バミ」とは言わない。

第四の壁

舞台・絵画・映像作品などで、観客と作品内世界を隔てている、仮想の透明な壁のこと。舞台においてはステージの最前面側の空間、絵画では絵画それ自体、映像作品ではディスプレイ面が第四の壁にあたる。舞台で言えば、舞台の両サイドと奥が物理的な壁となっているために、観客の視線は常に(透明な)第四の壁越しに作品内世界を観測することになる。たとえば、著名な「一休さん」の逸話の中で、一休は「その虎を屏風の中から出してください」ととんちを返すが、これはつまり虎に第四の壁を越えさせてください、という意味に近しい。
舞台演劇において、舞台側から演者が観客席を観測する場面や、あるいは舞台から実際に飛び出して観客席側に降りてしまう例があり、これは第四の壁に対するアプローチの一例である。詳しくはWikipediaの同項へ。

早着替え

キャストが短い時間内に着替えを行うこと。特に「早着替え」と表現している場合、そのための衣装の工夫(引っ張るだけで脱げるなど)があったり、着替えるための練習を積んでおく必要があったりする場合を指すと考えていいかと。AD-LIVEではなかなか考えられないが、通常の演劇や音楽ライブでの早着替えの場合は、着替え用に裏方のスタッフを待機させておくことも多いはず。もちろん、脚本や演出の都合があるから頑張って早着替えをしているわけで、多くの場合は着替えのための尺を他のキャストが作るのです。
余談ですが、ダンスパフォーマンス等での早着替えの場合は、舞台上でそのまま着替える形になるため、だいたい1秒程度のアクションで着替えを完了していたりする。当然、着替えのところだけ何十回も練習しています。

エチュード

ここでは芝居の一種のこと。場面とキャラクターのみが設定され、台本がないままに即興で芝居をする、というもので、稽古でもよく行われる。どのようにキャラクターが設定されるか、どのように終了するかは千差万別で、時間で区切る場合もあれば、ひとくさりまとまるまで、という形で行う場合もあり、多種多様。もともと「エチュード」自体はいくつも意味を持ち、楽器演奏などの分野では練習曲、絵画など芸術分野では下絵、習作を指す。

インプロ

インプロビゼーションとも。役者が即興で行う演劇のことを指す。
私は演劇の専門家ではなく、エチュードとインプロの厳密な違いを正しく語ることはできそうにないが、調べてみた限り、エチュードにおいては場面・キャラクターが設定された状態をスタートとする場合が多いが、インプロにおいてはそれは必須ではなく、また、特に相手の役者が発してきたものを「受け入れ、その上で」芝居をしていく、という、コミュニケーションに特に力点が置かれる例が多い……のでは。
エチュードは「自身を役にする」取り組みであり、インプロは「役で物語を作る」取り組み、だとか、あるいは、エチュードは1人でも行えるが、インプロは1人では行えない……など、あれこれと考えてみているところ。

アドリブ

AD-LIVEではなく〈ad-lib〉のほうのアドリブ。「即興で行う」という意味で、本来は芝居に限らず、広く動作全般に用いることができる語。特に日本で「アドリブ」と表現する場合、本筋となる台本が存在していて、そこにさしはさむように行われる即興芝居のことを指しているイメージがありますね。

マクガフィン

作劇に関わる用語で、「作中の登場人物にとって極めて重要であり、彼らの行動を左右する目標物や仕掛け」のこと。特にアルフレッド・ヒッチコックが自身の作劇技法について説明する時に多用した概念。多くのマクガフィンは置換が可能であり、それが実際に何であるかは問われないという性質を有する。
例えば、スパイがある建物に潜入して何かを奪う、というシチュエーションにおいて、その「何か」は作中のほぼすべての人物にとって重要なものでなければスリルが発生しない。しかし一方で、その「何か」は書類であっても、核ミサイルのスイッチであっても、隠し金庫のパスワードであっても構わない……というような。マクガフィンそれ自体に対する掘り下げは演出面で無駄を生む場合があるため、必要に応じて説明を大胆に省いたり、あるいはマクガフィンをことさらに陳腐なものに設定したほうが作劇が整頓される。
つまり、マクガフィンとは一種の「お約束」と密接なかかわりがあるのです。AD-LIVEにおいては、小道具が有するべき信頼性・情報量と関わる概念でもあり、考え始めるとなかなか面白いんですよね。

信頼できない語り手

多くの場合は小説において利用される用語で、小説中に書かれたあらゆる表現について、なんらかの理由でそれが作中の事実でない可能性がある場合を指し、「この語り手は信頼できない語り手である」などの形で用いられる。信頼できない理由としては、「一人称で書かれた文において、語り手が全知全能でない、不完全な認識を持つ人間であるために当然に生じる誤解や思い込みが混じっている」とか、「そもそも語り手が精神疾患その他の理由で通常の言語を操れない」場合、「語り手が積極的に聞き手を誤解させようとしている」場合なども含まれる。
……AD-LIVEにおいては「信頼」は特殊な成立の仕方をする。したがって「信頼できない語り手」が登場するのは一種の禁じ手に近い。……はずだったのだが……?

シンデレラ曲線

アメリカの作家、カート・ヴォネガット*2が提唱した、ストーリーの基本構造のひとつ。主人公*3のおかれている状況の良し悪し/主人公自身の幸福度や感情を縦軸にとり、時間経過を横軸において作図すると、多くの物語においてその曲線が

  1. 低い位置からゆるやかに下降
  2. 盛り上がり
  3. どん底に逆戻り
  4. 最高潮の盛り上がり

という経緯をたどる、という分析があり、この曲線の形そのものを、典型的な例である『シンデレラ』の名を取ってシンデレラ曲線、と呼ぶ。
『シンデレラ』の例で言えば、上記4つは「1. 継母たちにいじめられる日常 → 2. 魔法使いによって舞踏会へ → 3. 魔法がとけて日常に戻る → 4. 王子が迎えにきて大団円」となる。
なお、この曲線は反転して考えることもでき、その場合は

  1. 高い位置からゆるやかに上昇
  2. ある危機に陥る
  3. 危機を突破して栄華を極める
  4. 大きな破滅

と記述ができることに。物語の前半の流れからその後の大雑把な浮き沈み(成功か、破滅か)を予感することもできるし、逆に、大きな成功を描き出すために一種のどん底を通過しておくのがひとつのセオリーであることもわかる。

デウス・エクス・マキナ

日本語では「機械仕掛けの神」とも。ある種の物語展開のひとつで、舞台劇においては演出技法とも言える、一種の様式。物語において、状況が複雑化、かつ混乱し、万事が立ち行かなくなったとき、いっさいの前触れなく登場し、その時点までに登場したあらゆる条件を超越した能力でもって事態を強引に解決、収拾してしまう存在を指す。

  • いっさい前触れのない登場
  • 超越した振る舞いによるちゃぶ台返し

という点が特にポイントで、前振りのない夢オチ*4なども一種のデウス・エクス・マキナと言える。このような特性から、「箱庭世界に対する超越者」や「物語を強制終了させる存在」として、作中に実在させられる作例もある。このように登場したケースでは、アンチ・デウス・エクス・マキナ的な何かによって打倒される展開も多い。

*1:話・音曲などの一つの区切り・段落のこと。(大辞林より)

*2:日本では村上春樹が影響を受けたことでよく知られていると思います。短編が特に印象的です。

*3:カメラが常に捉えている人物、というところがこの場合の主旨でしょうね。

*4:前振り・伏線があるケースは除くべきでしょう。