リーディングスキルの問題文をあえて普通の文章に書き換える
について、せっかくなので、悪文・良文解説を試みたいと思います。はてなにおかれましては、日本語に一家言おありの方が多いかと思います。お詳しいみなさま、どうぞお手柔らかにお願いします。あるいは、手並みに覚えのある方は、ぜひ、わたくしと異なる書き換えにトライしてみてください。面白かったですので。
ではさっそくまいります。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
【問】 Alexandraの愛称は( )である。
選択肢 A.Alex B.Alexander C.男性 D.女性
【答】 A.Alex
ポイントは「順接の『が』」と、「余分な情報」かと思います。「の愛称であるが」は、逆接の意味をほとんどもっていません。また、「男性にも女性にも使われる名前で」の部分は、後段の言い換えにすぎず、文の骨子に影響していません*1
書き換え例:
Alexは、女性の名Alexandraの愛称であり、男性の名Alexanderの愛称でもある。
次の例題。
オーストリア、次いでチェコスロバキア西部を併合したドイツは、それまで対立していたソ連と独ソ不可侵条約を結んだうえで、1939年9月、ポーランドに侵攻した。
【問】 ポーランドに侵攻したのは、( )である。
選択肢 A.オーストリア B.チェコスロバキア C.ドイツ D.ソ連
【答】 C.ドイツ
「長すぎる主部」と「主述泣き別れシンドローム」の合わせ技かと思います。この場合は、「長すぎる主部」を一文に独立させて文意を整理し、主語と述語の距離を縮めると見通しがよくなります。
書き換え例:
ドイツは、オーストリア、次いでチェコスロバキア西部を併合した。その後ドイツは、それまで対立していたソ連と独ソ不可侵条約を結んだうえで、1939年9月、ポーランドに侵攻した。
最後の例題。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
【問】 セルロースは( )と形が違う。
選択肢 A.デンプン B.アミラーゼ C.グルコース D.酵素
【答】 A.デンプン
デンプンとセルロースに関する説明部分が、逆茂木型の連結になっています。特に、「酵素はグルコースが」という部分が難解です。語順を入れかえて整理することによって多少ましになります。さらに、読者にとってなじみのない語句については、過度の省略は避けたほうが親切です……やりすぎると冗長になりますが。
書き換え例:*2
アミラーゼという酵素はデンプンを分解する。だが、デンプンと同じくグルコースからできているセルロースは、デンプンとは形が違うため、アミラーゼでは分解できない。
こんな感じでございました。おそまつさまでした。
ふと思いたって追記:
実際の日本の社会を眺める限り、「これぐらいの悪文がさらりと読めない人」というのは多数いるように見えます。はてなは特殊なまでにインテリジェンスが集っていますし、その周囲の方々のレベルも推して知るべし、ということで、はてなではなかなか可視化されないでしょうが……。
この程度の悪文は巷にはあふれかえっているはずですし、その折々に断絶や格差、理解の速度差を生みかねないと私は思っています。せめてできるだけ、平易でわかりやすい文章を書きたい。