知的財産権の侵害と営業妨害について、つれづれなる
上記のとてもとても良い記事を読みまして。二度、三度と通読しまして。
そして、「あーあ」となりました。この「あーあ」はいろんな気持ちがこもった「あーあ」なのです。なので、書く。
その後、村上謙三久さんがTwitterの『ラジオの時間』公式アカウント(@time_of_radio)で
本来なら「著作権」というより、「権利意識」という言い方をするべきでした。(https://twitter.com/time_of_radio/status/810305093404913665)
偉そうにブログで書いてしまいましたが、同時に「僕ももう少し踏み込んで学んでいかなければ」と反省しております。(https://twitter.com/time_of_radio/status/810323231186026496)
と書いているように、「この言葉づかいでいいんだっけ?」とクエスチョンマークが浮かぶ個所がいくつかあるように思えるものの、大筋として十分に正しく、同時に、この現実の情勢に対してあまりに無力というか、あまりに遠しなのです。私は軽く絶望した!*1ので、せめては新しきエントリを記して、つれづれなる思索に挑みますか、という気持ちになり、こんなことを書き始めています。
フランスよりも遠いぞぉ、この地平は。
以下、「引用」とだけある場合は、上述のエントリより。
(1)Twitterで勝手に画像を上げちゃいけないのはわかってます。でも、アイコンやヘッダーならOKですよね?
×です。つぶやきであろうと、アイコンであろうと同じです。たぶん3~5割ぐらいの人がアウトなのでは? トリミングしたり、一部修正したりしても「×」です。写真のみならず、イラスト、漫画、広告なども基本的にはダメです。 (引用)
なぜ「×」なのか? 公衆送信権・送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害しているからですね。トリミング、一部修正は同一性保持権(著作権法20条1項)の侵害にあたる可能性があります。公式画像をキャプチャしてだよ、それでさあ、他の画像とがっちゃんこなんかしちゃってアイコンにしたら、そらもう! フルコンボよ!
人物の写真の場合には肖像権があり、特に声優やアイドルのような職業にある方たちであれば(著作権法上の明確な規定はないにせよ)パブリシティ権が認められますから、これもまた侵害行為デスよ。
Twitterアイコンなどについては、今は公式サイトが配布している例が多数あります。例えば今をときめくTVアニメ『ユーリ!!! ON ICE』でも、公式サイトの「SPECIAL」コーナーにあります(こんなふうに)。
「だからオッケーでしょ?」、ええ、改変しなければ。プリクラなどではおなじみの「フレーム」をかぶせれば、同一性保持権の侵害が成立してしまいます。
とにかく個人的にこれがキツイです。実際にTwitterをざっと眺めるだけで、それ侵害だよね?って事例は山ほど見かけます。そして、私が知的財産権の保持者ではない以上、「侵害ですよ」という指摘は法的になんの意味も持ちません。ただ、自分が見かけ、時には言葉を交わしたあの人が、「権利意識に関する知識がないか、権利意識そのものがないか、そのどちらかである」ということが、私の中では確信めいていく。これが「あーあ」なのでした。
(2)公式サイトやブログに画像が上がっているんだから、これをスクショしたり、画像保存してアップするのは問題ないはず。
×です。これらも全て権利侵害の範疇となります。 (引用)
上記と同様、公衆送信権・送信可能化権の侵害に相当します。ただし、画像URL*2直リンクであれば、原則的に「著作権法上の」問題はありません。その代わりに、サーバへの寄りかかりを発生させもするので、そのアクセス量が甚大になればサーバの処理能力を食いつぶし、極端な場合にはサーバダウンすらも引き起こしうるので、電気窃盗(盗電)のような、無体財産へのなにがしかというタイプの問題は残るんじゃないですかね。
(3)画像はNGですけど、動画からスクショするのは問題なし!
×です。声優ラジオでよく見かけますが、全て権利の侵害です。公式アカウントが権利関係をクリアしてやるのはOKですが、だからと言って、一般リスナーがやるのは×です。 (引用)
ちょっとこれは文言が説明不足かもしれないかな、と思っています。「スクショする」だけでは侵害とは言えないんじゃないでしょうか……。やはり「公開・再アップ」がセットのほうが、明確な侵害行為っぽい事例です。
それに、これは「引用」の成立に該当する可能性がそれなりにあるように思えます。
出典元を明記しつつ、スクリーンショットを明確に「従」の側に置くような自作の文章等をセットにして同じ場所に置けば、引用の要件は成立するように感じられます(これについては個人の感性です)。
トハイヱ、いえ、とはいえ、1ツイートにつき140字という制限のあるTwitterに限ってみれば、引用要件を満たせるほどの「主」をそこに乗っけられるかはとても怪しい。文字数だけが意味ではないが、意味は文字数に制限されるものですし。
また、たとえばもっと大きい話にしてみたって、アニメなどの解説を書籍で行うためにある場面の画を掲載するとした場合、それが明らかに引用の範疇だと多くの人が見なしたとしても、出版社は権利者の皆々様に確認を取りにいくでしょう。慎重にやるものですよ、こういうのって。していないとこういうこと*3になる。
(4)好きな声優さんがTwitterにアップしている写真がかわいい。よし、これを保存して、自分のアカウントでもアップしよう。
そのための公式リツイートです!
とだけ書くと、「主」が作れないので、少し枝道と知りながら書く。
自分でもダウンロード保存したい、という欲望――失礼、願いについて、アーカイブ性を根拠に正当化する理路がないでもないのだけれど、ここに応えたサービスに「ウェブ魚拓(http://megalodon.jp/)」がある。「ウェブ魚拓」の場合は、そのキャッシュに「いつの時点のキャッシュか」ということが合わせて記録されるので、ある時点でのアーカイブとしてはもちろん、データ削除による「消し逃げ」を追う証拠として、スナップショット、スクリーンショットと同様の機能を持っている。
何が言いたいかというと、アーカイブがとか言うなら「ウェブ魚拓」使いなさい、ってこった。
(5)Amazonで今度買う声優雑誌の表紙がアップされている! この本、売れてほしいんだよなあ。よし、これをスクショしてつぶやこう!
×です。Amazonの画像をアップしたい場合は、URLで紐付けしましょう。Amazonに上がっている画像自体は著作権をクリアしています。 (引用)
これが実はいちばん自分的にあいまいなところ。どうなんでしょうね?
「スクリーンショット&アップ」ですので、引用が成立しうる可能性がある。
例えば「Amazon販売ページ」のスクリーンショットに対して、「予約受けつけが開始していました! 発売日は〇〇、価格△△円。売り切れの危険があると思うので、私は即予約しました。今のうちにみんなも予約しよう!」ぐらい書くと、主従の「主」は文章の側にあると言えなくもなさそうに思えます。よりお詳しい方の説明が聞いてみたい。
もちろん、URL紐づけのほうが絶対に問題がないのは確かです。
こうしてつれづれ補足っぽいようなことを書いてきたのは、主に知的財産権の侵害事例を峻別し、その線引きを考えるためだったのだけれども、私自身の興味は、もう少しあいまいな領域にそのフォーカスがある。
具体的にはAD-LIVEです(またここかい、そりゃそうです)。
私はAD-LIVE2016全12公演を全部観て、全公演についてあれこれ書きました。書いた目的は「AD-LIVEを楽しんでもらいたい!」だったし、だからこそ「ここに書くべきでないこと」にもそれなりに熱い思いを持って臨んだのですが、全公演の上映が終了し、DVD、Blu-rayの発売を控えた今、その判断基準は変化してしかるべきなんじゃないか、と思うのですよ。
知的財産権の侵害ではなくっても、営業妨害ってことだってあるじゃないですか。
だって、「この記事があるからパッケージは買わなくていいや」となられたら困ります。誰が困るって、AD-LIVEスタッフが困り、続いて私が困ります。まだまだ続く、まだまだ広がるAD-LIVEのために、映像パッケージだって売れてほしいんです。
したがって、売上を減少させる可能性があるのなら、今までの記事は全部ひっこめたい、ひっこめなければなりません。「こりゃあ映像パッケージを買わないと損だぞ!?」と思われるような記事に仕立て直して、今までのものはひっそりと私だけが愛でられるところに……
……なーんてことが、「あーあ」に込められたのでした。
「あーあ」。
それと、『声優ラジオの時間 ユニゾン!』は購入しております。年末進行とコミケで今はさすがに厳しいので、年明け、休みになったらじっくり読むつもりです。
村上さん、良い本と良いエントリをありがとうございます! とても感謝しています。