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AD-LIVE 2016 9/25(日) 昼公演 考察 中村悠一・福山潤(リピート用のフラッシュメモ)

AD-LIVE2016 9/25(日) 昼公演の膨大なネタバレを含むので、未見の方は即座に閉じてください。

これは、私のように「ライブビューイングも観て、あとりぶも観る」、しかも役者の脳内にも迫ってみたいZE、というけっこう奇特な方のために即興で(アドリブで)書きつけるものです。のちにDVD発売に向けて追記するかも。
想定より記憶違いが多いので、そのあたりは割り引いてください申し訳ないです。

実は本公演、ここまでの8公演のうちでもっとも「演劇の舞台」っぽい公演でした。まとめたいことがいっぱいあります。

ではしばし開けて……













始めます。

  • 中村悠一さんの先攻となりました。脚本で言えば、中村さんがBキャストです。
    • 白衣にクリップボード。ずいぶん落ち着いています。対する福山さんは記憶喪失ながら自信まんまんがうわすべりするタイプのキャラづくりです。
      • 福山さんの瞬発力か、互いの初手の心づもりが相性が良かったか……おそらく前者だと思います。福山さんが読み取った中村さんのキャラクターづくりがド安定方面だったので、臆病キャラではパワーバランスが釣り合わない、と見込んで強いキャラクターに調整したのではないでしょうか。
    • システムからの警告にかかるかどうか、うまいところのヒントを出しつつ、名前、趣味、職業などを確定させていきます。中村さんのクイズの出し方が堂に入っていました。
      • 以降の場面も通じて、中村さんは「Bがそう言えばAは逆らえない」というタイプの情報の提示の仕方がいっそ鬼畜なほどに巧みです。Aを操縦する力が強いと言えます。鈴村さんに対する寺島さんもそうでした――と思うと、AがAD-LIVEの大ファン・福山さんであることも影響しているかもしれません。本当は逆で、相手が受けが巧いからそう見えるのかも。いや、やっぱり相乗効果ですよね。
  • そして対面の場面へ。ザ・デストロイ(演・福山潤)くんと「先生」(演・中村悠一)の対面となりました。
    • 「先生」いわく、本当に初対面だそうです。マインドダイブの、考えようによっては基本形中の基本形、「医者が患者を治療する」形を見せてきました。「ぶっちゃけ私は専門外なんだけど」と言い出すあたり、なんだか不安にもなりますが、ザ・デストロイくんについては「ダジャレ好き」などという細かいことまであれこれと知っているので、情報を持っていることはどうやら確かな様子。
      • この「ダジャレ好き」がまた……いくつもの要素がかみ合った、実に精密な一手です。結末から振り返ってみると驚嘆します。中村さんは、鈴村さん・浅沼さんと相談しつつ改稿を6度もくり返し、中には「それいただき」というものもあったそうで、もしかしたらこのアイデアも……?
  • バスに乗り込み、思い出の場所へ。さらにいくつかの情報をデスくんに伝え、状況を整理する場面となります。
    • ちらほら入ってくるDTネタがさわやかに面白いです。下ネタを怖がらないお2人によって笑いが生まれる、楽しい時間でしたね。
      • 中村さんがどんどん福山さんのキャラクターを残念に仕立てていくくだりが楽しい一幕です。「DT」で福山さんがご出演の『イクシオンサーガDT』を思い出した方。……仲間!
  • 思い出の場所・その1。机の上へ。
    • 状況が見えないデスくんのため、早々に思い出ボックスを開け、キラーアイテム、ピンクの法被を見つけ出しました。とたんにはっちゃける福山さんのアクションがたまりません。中村さんの説明する「なぜ机の上か」という理屈づけも見事に成立し、「アイドルオタク」デスくんが爆誕しました。
      • AD-LIVE2015で鈴村さんが福山さんを評していわく、「行くとなったらガーッと一気に突っ走って、引くときはスンッ…と引く」だそうで、ここは福山さんの突っ走りポイントだったですね。
      • 中村悠一さんのアイデアの質の高さがさえわたるこの場面、「べるそん」がやたら乱舞する文具類も笑いどころのひとつです。実はこれには世界観に沿って屁理屈がつけられまして、「固有名詞によって治療対象者の記憶に介入しないよう、マインドダイブシステムが可視化された固有名詞に相当する文字列を上書きしている」とか言い張れます。
  • バスに乗り込み、再び移動。「先生」は、置いてあったスケッチブックで「超能力を見せる」と言います。
    • ここでリアル舞台ならではの大技! 中村さんは観客席を利用しての情報交換をしてきました。アニメ等でのイベントではよく行われる手法ですが、演劇では一種の破格です。観客席のどよめき、福山さんの「誰もいないじゃないか!」という迫真の芝居をきれいにかわし、観客から情報を得て、見事期待の結果を出しました。
      • 舞台用語でいうところの“第4の壁を破る”(リンク先:Wikipedia)に当たります。そういう意味では、舞台ではそれなりに一般的に用いられる手法ではあります。舞台演劇っぽい、と感じた根拠のひとつはここです。
      • リンク先を参照していただければより明らかになるように、もともとAD-LIVEはそれ自体が“第4の壁”をあの手この手を駆使して揺らがせ、各所で破ろうとする舞台です。リンク先にある「即興劇における第4の壁への妥協」という性質はもちろん、なんといっても観客からの募集で成立するアドリブワードがその最たるものでしょう。特に今回の脚本では、劇場をベルソン社日本支社に、観客席をマインドダイブ見学ツアー用の座席に見立て、観客をより明示的に「当事者」に仕立てていますから、AD-LIVE2016演出部はこの点に十分以上に自覚的だったはずです*1。そんなわけで、中村さんがこの形で“第4の壁を破る”演出に踏み込んだことは本当に嬉しく、面白く観劇しました。
      • また、ここで中村さんはもうひとつ大技を使っています。それが「マインドダイブ」のオーバーライド(上書き)です。ここで中村さんがマインドダイブ見学ツアーの座席を別のものに再配置したおかげで、世界観自体が書き換わってしまいました。これが最終場面への伏線になります。
  • Cキャストの乱入を受けます。アイドル・星野ユカで飛び込んだのは、北海道の演劇集団ELEVEN NINESより、廣瀬詩映莉さん! とてつもないものを見せつけてくださいました。
    • 聖子ちゃんヘアーに白いワンピース、白銀に輝く剣を振り回し、「心の大木、へし折るゾッ🌳きこりアイドルのゆかりんデスッ🌳バッ木バ木✨✨」(廣瀬さんのツイートより引用)ですよ。リバウンド云々で体重ネタでまでいじられた上、バスの中で歌まで歌ってくれ、おまけに退場時のインパクト。好きになるしかないよこんなの!
      • この日のために札幌から上京の19歳、とんでもないスーパースターでした。選ばれた理由はアフタートークの鈴村さんいわく「聖子ちゃんヘアが似合うから」。登場後、中村さんと福山さんが喋っている間、姿勢を正したまま、ずっと黙って待てるところも凄まじい度胸です。完全に心の大木をへし折られたので、今後もお見かけするたび注目すると思います。
      • おそらく前入りで、撮影とかやってると思います。CDジャケットに出てたので。
    • バスの中で、再度スケッチブックによるテストにトライ。同じ行為をくり返し、結果を変えるのは、進行を表す効果的な手段だと思います。中村さんの構築のスマートさが際立ちます。
      • この時、福山さんが正解しても不正解でも、中村さんには捌きようがあります。正解なら「そこまで進んじまったか」、不正解なら「まだ間に合うってことだ」、とか。そこもいい。
  • 思い出の場所、その2へ。
    • デスくんが自ら死を選んだその場所で、「先生」は何が起こったかを語り始めます。「なんでだよ! だって俺たちのユカリンじゃん!!」という悲痛な絶叫が響く、クライマックスです。
      • 福山さんの「一気に突っ走る」が結実したシーンであり、それを成立させる中村さんの態度が涙出るほど凄い場面でした……。福山さんが「自らの再現ドラマ」を行っており、中村さんがナレーション側に立っています。2人の位相が一時的にズレている。このような「同じ舞台にいながらにして位相がズレている」という演出は舞台演劇ではよくある*2んですけども、位相のズレを正確に配さないと混乱を招きかねず、そうそう即興でやれるものじゃないと思います。自らの設定を完璧に読み取った上、離れ業まで実行した福山さん、受け止めた中村さん、どちらも凄いです。
    • そして明らかになる「先生」の秘密。驚愕するデスくんに、「先生」は手紙を渡し、消えてしまいます。
      • 中村さんが張っておいた伏線が機能しました。観客席のみならず、「マインドダイブ」それ自体をすべてオーバーライドして、風景を一変させています。定型のシステムアナウンスすら、「気付かれたみたいだな。間もなく装置がリセットされて、俺は追い出される」とセリフでそつなく上書き。中村さんの構築が隅々まで行き届いてもうたまりませんね!
      • 【推測】中村さんには、出さなかった手札がいくつか残っています。「なぜ自分が『ザ・デストロイくんに』会いに来たのか」、言い換えれば「なぜデスくんにこんなに思い入れてしまっているのか」です。たぶん彼は、デスくんの趣味に乗っかって、その言葉(ダジャレを含む!)をのぞき見するうちにすっかり彼を気に入り、応援したくなってしまったのでしょう。そしてこれは、「言葉だけで相手を好きになる」という点で、デスくんとピスタチオさんの関係の相似形になっています。「言葉を通して好きになった相手に会いに行く」ことをした彼は、その先で、デスくんにも同じことをしてほしかったんではないでしょうか。「俺はこうしてお前に会いに来た、楽しかった。だからお前もきっと大丈夫、会いに行け」とね。結果的にあんまり強調されなかったのですが、先生とデスくんの関係が、デスくんとピスタチオさんの関係のモデルになる構図は意図的なものだと思っています。
      • ネットネタとしては、『攻殻機動隊』の言葉を思い出したりしますよね。ネットは広大だわ
  • そして最終場面へ。
    • とんでもない実景と、とんでもないオチが待つ、どんでん返しにつぐどんでん返しでした。大喝采!
      • これ言っちゃっていいんですか?と確認を経ての中村悠一氏いわく「お知らせランプがあるんですよ。来るか来ないかを示すやつが。で、それがグリーンに点灯しまして。『え? 俺90分の公演で目がおかしくなった? 来るの? え?』ってなった」だそうです。鈴村さんもまた、この結末を「ハッピーバッドエンド」と評しつつ、「潤に、『いいから中村の実景を見てから決めろ』と言ったんだけど、すぐ『行く』って言うから」と。一方の福山さんは「俺としては鈴さんにそう言われて、思った通りの実景だったんで、『行きます!』って即決」。こ、この化物どもー!
      • 中村さんとしては、「断固としてこさせない、出てこないのにハッピーエンドになるように」と誘導を強烈にかけていたそうです。途中の向日葵テコ入れもその一環。賢雄さんに続き「相手が悪かったな」オチと言えます。
      • また、福山さんとしてもオタ芸はあまり知らず、2種類ぐらいしかないのを誤魔化していたとか。2人そろってのオタ芸以降は汗だくだったそうです。お疲れさまでした。

あー、書きに書いたり、およそ5000字になりました。本当にこの公演は読み込みがいがあります。この公演の設定だけで3万字くらい小説書けそう。今日の「あとりぶ」も楽しみです!

*1:ごく個人的にも、もうひとつ確信にいたる論拠がありますが、その話はまた別の時に

*2:2場面どころか、3場面ぐらい同時進行させたりする舞台もあります